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PAiD(有給)というプログラム名は何を意味しているのか——LA郡における公共芸術の制度設計の更新
「PAiD(Public Artists in Development)」。このほどロサンゼルス郡政府芸術部局Department of Arts and Culture(以下、Arts and Culture)が立ち上げた新しい公共芸術プログラム(https://www.lacountyarts.org/opportunities/public-artists-development-program )には、あえて「Paid(有給)」を想起させる名称が付けられています。この直球のネーミングは、どこに意味があるのでしょうか。 このプログラムはAndrew W. Mellon Foundationによる助成金を財源として、LA郡Arts and CultureのCivic Arts部門が実施するもので、プログラムの開発と運営にはアートコンサルタントのDyson & Womackが支援に入っています。 参加アーティストは単に研修に参加するだけではなく、一定額の予算や報酬が明示的に付与されます。たとえば、Artist Councilプログラムに選ばれた

Arts&Considerations Tomoki Sakuta
12 時間前読了時間: 9分


なぜ反DEIへの逆風のなかでも「公平性」は生き残るのか ― 非営利芸術文化活動実務者の全国組織「GIA」の2026年方針を読む
非営利芸術文化活動実務者のハブ組織GIAの2026年方針を読む このブログでは以前の記事で、アメリカの芸術文化分野における多様性や公平性をめぐる取り組みが、近年のDEI(Diversity, Equity, Inclusion)言説によって突然出てきたものではなく、障害者アクセシビリティ、雇用政策、文化機関の人材育成、有給インターンシップといった、より長い制度的蓄積の上に成り立っていることを書きました。文化へのアクセスを広げることと、分野の担い手の多様性を確保することが、かなり以前から連続した課題として扱われてきた、という見取り図を示したつもりです。 ただ、そのような説明に対しては「歴史的な系譜があるとしても、反DEIの政治的バックラッシュがここまで強い以上、現場も結局は実質的な方針転換を迫られているのではないか。少なくとも、芸術文化活動の実務においてまで、枠組みが維持されていると言ってよいのか」という疑問も当然あるかと思います。 たしかに2025年以降、連邦レベルではDEIに対する政治的攻撃がいっそう可視化し、「DEI」という語そのものを掲げる

Arts&Considerations Tomoki Sakuta
5 日前読了時間: 17分


「NCAPER」20周年から学ぶ:日本の芸術・文化業界がいま構想すべき『協調的セーフティネット』
文化芸術業界に長い方でも「 NCAPER 」(エンケイパー)こと National Coalition For Arts' Preparedness の名前を初めて聞く方が多いでしょう。直訳すると「全米芸術準備連合」ですが、もうすこし砕いて「 全米芸術準備・緊急対応連合 」と言うと少し想像しやすくなるかもしれません。 2026年3月に設立20周年を迎えたこの団体は、アメリカの芸術セクターにおける「災害のためのセーフティネット」のつくり方そのものを変えてきた存在で、20周年の区切りを迎えたいま、全米の文化政策関係者から改めて注目され、言及されています。SNS上でも、NCAPERの20周年は文化団体や州芸術機関がシェアするかたちで拡散されており、NCAPERが単なる一団体ではなく、「危機のたびに頼りにされる、芸術セクターの共通基盤」として認知されていることを物語っています。 NCAPER ロゴ 2005年のハリケーン・カトリーナとリタの被害とするボランティアベースのタスクフォースとして始まったNCAPERは、この20年で、 単発の救済基金から「全国規

Arts&Considerations Tomoki Sakuta
4月17日読了時間: 25分


パブリックアートの記憶は誰が守るのか——持続可能なアーカイブの設計思想
《Seven Magic Mountains》Ugo Rondinone 砂漠での蛍光色との出会い 10年ほど前、仕事でアメリカに赴任していた頃の話です。グランド・キャニオン方面への家族旅行で、幼い子どもたちとパートナーを自家用車の後席に乗せてロサンゼルスを発ち、まずはキャンピングカーを借りにラスベガスへと向かう途中のこと。寝ていたと思った後席のパートナーが「なんか変なものが見える!」と叫びました。目を向けると右手の砂漠の中に、確かにちょっと人工的な、塔のような、しかし遠目には岩と砂の風景に溶け込むようなシルエットが見えました。だんだんと近づくと、ポップな蛍光色——ピンク、オレンジ、黄色、青——に塗られているようでした。 ラスベガスまではその前年にも仕事で運転して行ったことはありましたが、そのときには確かにそんなものはなかったので、「あれは何だろう? 何かイベントの準備か撤収の途中なのかな」などと思いました。 すると、スマホで調べていたパートナーが「あれ、ウーゴの作品だよ!ウーゴ・ロンディノーネ!」と教えてくれました。彼女は2011年の横浜トリエ

Arts&Considerations Tomoki Sakuta
4月16日読了時間: 19分


アートワーカーの多様性を確保するための政策はどこまで拡がっているか
「学生が夏休みにインターンをする機会が制度化されました。選ばれる必要はありますが、採用されたら有給で、最大週33時間、8週間勤めると、124万円の報酬を受け取れます。」と聞いたら、驚きますか? これが、例えば金融業界の話で、対象もエリート大学生だったら、「まあそんなもんじゃない?」と思う人もいるでしょうが、実はこれは美術館や劇場などの文化機関で、将来的に働く人の多様性を確保し、職場の持続可能性を強化するために行われている、 公立校の高校生向けプログラム なのです。 ただし、残念ながら日本の話ではありません。 筆者注:筆者は平成30年度文化庁委託事業「諸外国の文化政策等に関する比較調査研究」の成果報告書の一部をなす 『ダイバーシティと文化政策に関するレポート』(平成31年3月) において、アメリカ合衆国部分を担当した。本稿は特に学生等への有給インターンに着目して、上記調査から約8年を経た現時点での状況を追い、制度の源流から、どのように発展し、逆風のなかで何が持続しているかを記録するものです。 ブルームバーグ慈善財団による資金提供...

Arts&Considerations Tomoki Sakuta
4月15日読了時間: 22分


アーティスト/フリーランスのアートワーカーの持続的活動と「リビングウェイジ」——文化政策が報酬問題に向き合う方法論
昨日公開した「、 組織で働くアートワーカーの給与に関するアメリカでの労働慣行の改革についての簡単なまとめ記事 が反響を得ました。中には「自分は日本で何度もアンケートなどに答えて、データ化もされたけれど、そこから議論が起こるわけでもなく、個別案件のまま、問題集約もされなかった」という声もありました。そこで、あらためて アーティストを含むフリーランスのアートワーカーの報酬問題についての最新状況と、そこに至るアプローチに関する記事 を執筆することにしました。 ※今回は芸術業界全体の状況が中心となります。なお為替レートは最新のものにもとづき1ドル=159円、1ポンド=215円で計算しています。またURLリンクは末尾にまとめました。 アーティストやアートワーカーは「好きなことをしているのだから、お金のことは二の次でいい」——そんな暗黙の了解が、文化セクターに深く根を張っています。しかしその前提を問い直す動きが、政策の言葉として国際的に広がりつつあります。 キーワードは「リビングウェイジ(Living Wage)」です。 リビングウェイジとは何か...

Arts&Considerations Tomoki Sakuta
4月14日読了時間: 24分


怒りはデータに、データは制度に――米国美術館アートワーカー労働運動の三段階と日本への問い
「好きなことを仕事にできているのだから」。アート業界で働く人々が、低い報酬や不透明な処遇を前にしばしば向けられてきた言葉です。本ブログではアーティストやクリエイターへの公正報酬について取り上げてきましたが、文化・芸術への「情熱」が、適正な対価を求める声を封じる口実として機能してきた構造は、作品の作り手に限った話ではありません。美術館・ギャラリー・劇場といった文化機関において、給与水準は長らく非公開とされ、横断的な比較も困難なまま放置されてきました。その結果、低賃金・不安定雇用・昇進機会の不透明さが「業界の常識」として内面化され、当事者自身が問題として言語化することを躊躇う状況が続いてきました。日本のみならず、アメリカを中心に海外でも同様の問題が水面下で拡大してきましたが、可視化されにくいまま放置されてきたとも言えます。 しかし昨今、こうした慣習は改められなければならないという認識が広まっています。優秀な人材が業界を離れ、多様な背景を持つ人々が入口で弾かれ続ける構造は、文化機関、ひいては文化セクターそのものの持続可能性を脅かす問題です。美術館や劇場

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4月13日読了時間: 9分


開幕まで1カ月、揺れ続けるヴェネチア・ビエンナーレ——ロシア復帰・イスラエル論争・EU圧力の三重苦に出口は見えるか
ヴェネチア・ビエンナーレとは何か——その130年の歴史 ヴェネチア・ビエンナーレ(ヴェニス・ビエンナーレとも)は、 1893年4月19日のヴェネチア市議会の決議 に端を発し、ウンベルト1世とマルゲリータ王妃の銀婚式を祝う国内芸術展として構想されました。 第1回展は1895年4月30日に開幕し、初回からおよそ22万4,000人の観客を集めました 。もともとイタリア国内向けの展覧会でしたが、翌年には外国人アーティストへの招待制が導入され、すぐに国際色を帯びていきます。 20世紀を通じてビエンナーレは、近代芸術の変遷をそのまま映す場となりました。 ファシズムの時代には政治的プロパガンダの舞台ともなり、戦後の民主化のなかで冷戦期の西側芸術を象徴する場に転じ、1960〜70年代には前衛芸術運動の震源地 となりました。 そのなかでもとりわけ象徴的な出来事が、1964年のビエンナーレです。ロバート・ラウシェンバーグがアメリカ人として初めてグランプリを受賞したこの年、アメリカ政府は大型の絵画作品をヴェネチアに輸送するにあたって軍艦(軍用艦艇)を使用したという逸話

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4月12日読了時間: 9分


ニューヨークの不動産事情とアメリカ美術の没落――ジョシュ・クライン「New York Real Estate and the Ruin of American Art」
この記事について 今回は、キュレーターの天野太郎さんに教えていただいた、ジョシュ・クラインの論考 「New York Real Estate and the Ruin of American Art」 を紹介します。 この論考は OCTOBER 195号(Winter 2026)に掲載されたもので、掲載ページは91–109頁です。 またこの文章は、 October 誌の継続企画「Art Communities at Risk」の一篇でもあります。 MIT Pressのウェブサイトから要約と全文PDFを読むことができます 。 このエッセイは、ニューヨークの不動産価格の高騰が、アーティストの生活、制作、展示、販売、さらには作品形式そのものにまで影響を及ぼしているという問題を、かなり正面から論じた文章です。 公開後まもなく、この論考はニューヨークのアート界で広く話題になり、メディアの論評だけでなく、実務者のあいだの会話やオンライン・コミュニティでも継続的に参照されるテキストとなり、2026年4月6日付けのUSA Art Newsの記事では「cityw

Arts&Considerations Tomoki Sakuta
4月11日読了時間: 31分
![日本芸能実演家団体協議会[芸団協]による映画・テレビ、美術、音楽分野を含む調査報告書が語るもの](https://static.wixstatic.com/media/579bfd_2ce4743a89044a6f9c32e0680456b7bd~mv2.jpg/v1/fill/w_333,h_250,fp_0.50_0.50,q_30,blur_30,enc_avif,quality_auto/579bfd_2ce4743a89044a6f9c32e0680456b7bd~mv2.webp)
![日本芸能実演家団体協議会[芸団協]による映画・テレビ、美術、音楽分野を含む調査報告書が語るもの](https://static.wixstatic.com/media/579bfd_2ce4743a89044a6f9c32e0680456b7bd~mv2.jpg/v1/fill/w_454,h_341,fp_0.50_0.50,q_90,enc_avif,quality_auto/579bfd_2ce4743a89044a6f9c32e0680456b7bd~mv2.webp)
日本芸能実演家団体協議会[芸団協]による映画・テレビ、美術、音楽分野を含む調査報告書が語るもの
公益社団法人 日本芸能実演家団体協議会[芸団協]さんは、実演芸術家の権利擁護を中心とした団体で、実演家・芸術家・スタッフ等の不定期な働き方をふまえて、2022年度より、「芸術家等の社会保障」について、国内外の取組の研究を進めておられます。 2025年度には対象を広げ、実演芸術以外の芸術活動(映画・テレビ、美術、音楽)を対象として調査をされています。このほど、報告書を公表されました。 報告書では、過去の調査研究もふまえて、現状と課題を整理しています。 https://geidankyo.or.jp/archives/5619 今回のブログでは、この報告書の内容を紹介していきます。 なぜ今、「芸術家を支える仕組み」が必要なのか 新型コロナウイルスの感染拡大によって、コンサートや舞台公演、美術展など、多くの文化イベントが中止や延期に追い込まれました。 その結果、芸術家や実演家の収入は一気に落ち込みましたが、失業手当や休業補償のように、自動的に救ってくれる仕組みはほとんどありませんでした。 この経験を通じて、日本の文化芸術を支える人たちの生活基盤が、いか

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4月9日読了時間: 14分


トランプ政権のFY2027予算要求、NEA予算を2億ドルから2,900万ドルへ大幅縮小提案―米国芸術文化政策の攻防
米国の州芸術機関ネットワークであるNASAA(National Assembly of State Arts Agencies)から、2026年4月6日付で「President’s FY2027 Budget Proposes Minimal NEA Funding」と題するメールニュースが配信されました。 同機関で立法顧問を務めるIsaac Brown氏による呼びかけの形式をとった この文書によれば、トランプ政権は2027会計年度予算要求において、National Endowment for the Arts(NEA)の予算を現行の約2億700万ドルから約2,900万ドルへと大幅に減額し、機関の段階的な終了を意図しているとされています。 ※なお、日本の会計年度は期首が属する年で表記しますが、米国連邦政府の会計年度は前年10月1日から当年9月30日までであり、FY2027は2026年10月1日から2027年9月30日までを指します。 つまり表記は期末月が属する年となる点に注意が必要です。 NASAAは今回の提案に失望を表明しつつも、昨年の提案や第

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4月8日読了時間: 9分


地域文化政策のインフラを可視化する——『アーツカウンシル・ネットワーク年鑑2025』が問いかけるもの
2026年3月付けで、『アーツカウンシル・ネットワーク年鑑2025』が公開されました。 本稿では、この年鑑を単なる全国団体の一覧資料として紹介するのではなく、日本の地域文化政策が現在どのような構造的課題に直面しているかを映し出す記録として読み解いていきます。 日本のアーツカウンシルとは何か まず、「アーツカウンシル」という概念の整理が必要です。文化政策の文脈においては一般的に、20世紀なかばに設立された「アーツカウンシル・オブ・グレート・ブリテン (英国芸術評議会)」とその後継機関である「アーツカウンシル・イングランド」をモデルとした 、英連邦に広く見られる「アームズ・レングス」(政府からの一定の独立性を保った)の芸術振興・助成の専門機関を指します。 ※ただし主に米国での例ですが、市や郡など小規模な自治体レベルでの「Arts Council」の名を持つ団体の中には、芸術関係者による芸術団体そのものである場合もあることに注意が必要です。 これに対して日本では、もともと横浜市のACY(アーツ・コミッション・ヨコハマ)のように、一部の大規模な自治体にお

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4月3日読了時間: 10分


アートワーカーの労働環境を可視化する一歩——CP Lab. Kyotoの調査報告書を読む
京都のアーティストの利用も多い滋賀県のアーティストインレジデンス「芸術準備室ハイセン」 京都市芸術文化協会が運営する Creative Professionals Lab. Kyoto(CP Lab.) が、「アートワーカーの労働環境に関する調査 2025-2026」報告書を 2026年3月19日に公開 しました。調査は2025年12月28日から2026年1月21日にかけて公開ウェブフォームで実施され、74件の回答が集まっています。対象は、文化芸術分野を支える多様なアートワーカー、とりわけアートマネージャーやアートコーディネーター等の中間支援人材です。 この調査の意義は、文化芸術を支える人材の働き方について、印象論ではなく、現場からの回答をもとに論じるための土台を示した点にあります。もちろん、公開ウェブフォームによる74件の回答で日本全体を代表するとは言えません。しかし、これまで見えにくかった実務者のキャリア、収入、研修、引き継ぎ、社会的評価の問題を、具体的な項目に即して可視化したこと自体が重要です。 調査の概要 報告書によれば、本調査の目的は、

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3月28日読了時間: 7分


カリフォルニア芸術評議会の50周年の節目から読む、米国公的芸術助成の新潮流
カリフォルニア芸術評議会が50周年を迎え、州内団体向けの2026年度助成金公募を開始。申請締切は5月12日。

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3月18日読了時間: 5分


2026年、東京が世界の文化政策の舞台に――WCCFサミット開催と『World Cities Culture Report: 5th Edition』が示す未来
いま、世界の主要都市では、「文化」を単なる娯楽や付加価値としてではなく、都市課題の解決や市民のウェルビーイングを支える「golden thread(黄金の糸)」として捉え直す動きが強まっています。その中心にあるのが、 World Cities Culture Forum(WCCF) です。 2026年10月、第15回世界都市文化サミットが東京で開催 WCCFは、ロンドン、ニューヨーク、パリ、東京など45を超える都市が参加する国際的なネットワークです。次回の 第15回 World Cities Culture Summit は、2026年10月28日から30日までの3日間、東京都をホストとして開催されます。世界各地の都市リーダーが東京に集い、文化が都市のレジリエンスやイノベーションをどう支えうるのか、その実践知を共有する機会になります。 2025年アムステルダム・サミットのレポート 東京開催に先立つ2025年10月には、 アムステルダムで第14回サミット が開催されました。テーマは「Stronger Together: Culture in a C

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3月17日読了時間: 4分


artscape30周年企画「アーカイブ」をめぐる3本の記事を読む──制度史と実践知をつなぐために
1995年以降DNPが運営しているアート情報サイト「artscape」の30周年企画として、昨年末に弊所代表の作田が寄稿した論考「美術館・博物館における『デジタルアーカイブ』制度の変化──30年間のアーカイブを読み解く(2)」に加え、このたび(2026年3月4日)、アートに関する情報のアーカイブそのものをめぐる議論に参加した対談の前後編が公開されました。今回は、この3本をあわせて紹介したいと思います。 1.制度としての「デジタルアーカイブ」をたどる論考 まず論考では、1995年以降の約30年間を対象に、美術館・博物館とデジタルアーカイブをめぐる制度的な変化を、できるだけ見通しよく整理することを試みました。インターネット普及初期の「電子博物館・美術館構想」、1990年代後半の「デジタルアーカイブ」という言葉の定着、2000年代前半の文化遺産オンラインや近代デジタルライブラリーなどの公開、さらに2009年前後の著作権法改正や公文書管理法制定といった制度面の転換を通じて、美術館・博物館が何を保存し、どう公開し、どう活用するのかという枠組みが大きく変わっ

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3月4日読了時間: 4分


全米の文化の活力を測る「Arts Vibrancy Index」発表!10周年を迎えランキングが上位100都市へ大幅拡大
上位100都市の分布(SMU DataArtウェブサイトより) SMU DataArtsは、芸術組織の財務データ等を科学的に分析し、エビデンスに基づいた知見を芸術文化政策分野に提供することをミッションとしている、政府や業界団体に属さない独立した調査研究機関であり、サザンメソジスト大学(SMU)メドウズ芸術学校を拠点としている「全米芸術研究センター(National Center for Arts Research)」の一部です。 そのSMU DataArtsは、2026年1月8日に、全米のコミュニティにおける芸術・文化の豊かさを可視化する「Arts Vibrancy Index 2025」を公開しました。今回10回目という節目を迎えたこのレポートは、これまでになく包括的なデータとなっており、地域社会における「芸術の活力」がどのように維持・発展しているかを示しています。 1. 今回のポイント:上位40都市→100都市へ対象を拡大 2025年版の最も大きな変更点は、これまで上位40都市(大規模・中規模・小規模の各カテゴリー)に限定されていたランキン

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2月16日読了時間: 4分


不忍池は繰り返す-野村穂貴《運命は、アヒルのように、光を作す》
今年も卒業制作展の季節です。弊所代表の作田知樹は今年、母校(のひとつ)の東京藝術大学美術学部の同窓会「杜の会」にて、卒業・修了制作展の展示作品から優秀作を選ぶ「杜賞」選考委員に任じられました。この賞の受賞者については今後の発表と会報への掲載を待つとして、今回はその審査のために出身学科である先端芸術表現科の卒業制作展で目についた作品について紹介します。 上野公園の東京都立美術館、光量の落ちた通路を抜け、少し奥まった、照明を落としたエリアの中でいくつかの作品を見ていたときでした。ふと顔を上げると、床から見上げる高さに、巨大で、キッチュで、しかし妙に愛嬌のある白いアヒルが、静かにこちらを見下ろしていました。白い、一目で張子とわかる表面、漫画的に誇張された目、鮮やかなオレンジの嘴。造形としては「かわいい」に属するはずなのに、周囲は暗く、床面には銀色に反射する素材が水面がを模していて、全体がどこか落ち着かない。そんな部屋の中に、白い張子の肌、漫画的に誇張された目、オレンジの嘴のアヒル。いわゆる「かわいい」造形なのに、周囲は暗く、床面には光沢の“水面”が広が

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2月6日読了時間: 5分


「文化」はサステナビリティの第4の柱になれるか — 理論から評価手法へ
近年、美術館や舞台芸術、地域の祭礼といった文化活動の分野でも、サステナビリティ(持続可能性)という言葉を耳にする機会が増えました。ただ、その議論の多くはどうしても、CO₂排出や資源消費といった環境負荷の問題、あるいは収益性や地域経済への波及といった経済的側面に集中しがちです。文化活動の価値がそこだけにあるわけではない、ということは多くの人が共有していると思いますが、それをどう説明し、どう評価するのかとなると議論は簡単ではありません。 そんな中で、2024年に発表された論文 “Methodological Framework for Integrating Cultural Impact in Sustainability Assessments of Cultural Events” は、文化政策の議論にとって興味深い試みを提示しています。この論文は、「文化をサステナビリティの柱として扱う」という考え方を、具体的な評価手法と結びつけて整理しようとしたものです。 この議論の背景には、文化政策分野では比較的よく知られている「サステナビリティの第4の柱

Arts&Considerations Tomoki Sakuta
2025年6月1日読了時間: 4分
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