top of page

2026年、東京が世界の文化政策の舞台に――WCCFサミット開催と『World Cities Culture Report: 5th Edition』が示す未来

  • 執筆者の写真: Arts&Considerations
    Arts&Considerations
  • 3月17日
  • 読了時間: 4分

更新日:1 日前

いま、世界の主要都市では、「文化」を単なる娯楽や付加価値としてではなく、都市課題の解決や市民のウェルビーイングを支える「golden thread(黄金の糸)」として捉え直す動きが強まっています。その中心にあるのが、World Cities Culture Forum(WCCF)です。


2026年10月、第15回世界都市文化サミットが東京で開催

WCCFは、ロンドン、ニューヨーク、パリ、東京など45を超える都市が参加する国際的なネットワークです。次回の第15回 World Cities Culture Summitは、2026年10月28日から30日までの3日間、東京都をホストとして開催されます。世界各地の都市リーダーが東京に集い、文化が都市のレジリエンスやイノベーションをどう支えうるのか、その実践知を共有する機会になります。


2025年アムステルダム・サミットのレポート

東京開催に先立つ2025年10月には、アムステルダムで第14回サミットが開催されました。テーマは「Stronger Together: Culture in a Changing World」。会議後のハイライト記事からも、都市間連携を通じて文化政策を鍛えていこうとする現在のWCCFの方向性がよく伝わってきます。このアムステルダム会議については、IfCC文化コモンズ研究所の記事で、吉本光宏氏が紹介しています。吉本氏は同プロフィールで「World Cities Culture Forum Founding Member (2012-)」と位置づけられており、WCCFの立ち上げに関わった一人です。記事では、トランプ政権からの度重なる干渉への対応で知られるスミソニアン機構長ロニー・バンチ氏のメッセージが取り上げられ、分断や不安が深まる時代において文化が果たす役割が印象的に論じられていますので、ぜひリンク先記事をご覧ください。

『World Cities Culture Report: 5th Edition』が示す都市文化の新潮流

アムステルダム・サミットでは、3年ごとの旗艦報告書である『World Cities Culture Report: 5th Edition』も公表されました。これは45都市、2億6,000万人超を対象とする、世界でもっとも包括的な都市文化データセットのひとつです。導入部と主要論点はIntroduction and Key Findingsから確認できます。

今回のレポートで特に注目したいのは、都市文化政策の焦点が、個別の芸術支援にとどまらず、都市運営全体へと広がっていることです。たとえば、次のような論点が前面に出ています。

  1. ナイトタイム・エコノミー

    97%の都市が夜間経済を支援しており、文化政策の主流テーマの一つになっています。

  2. 創造的なワークスペースの保

    94%の都市が、アーティストやクリエイターの拠点を守るための政策を進めています。

  3. 気候アクションと文化

    88%の都市で、文化部門と環境・気候部門の連携が進んでいます。

  4. 教育と若者

    97%の都市が創造教育や若者参加の施策を持ち、78%が初等中等教育に芸術や創造性を組み込んでいます。

  5. 持続可能な観光

    66%の都市が、持続可能な観光を重要課題として位置づけています。


ポスト2030のSDG議論との接点

WCCFの活動は、文化を持続可能な開発の中心に位置づけようとする国際的な議論ともつながっています。象徴的なのが、A Goal for Culture: The São Paulo Manifestoです。WCCFはここで、ポスト2030アジェンダにおいて文化を独立した目標として位置づける必要性を打ち出しています。これは、文化を他分野の補助線ではなく、都市や社会の基盤として扱おうとする近年の流れを明確に示すものです。


森記念財団のGPCIとは異なる、文化政策のためのデータ基盤

都市力を測る代表的な指標としては、森記念財団のGlobal Power City Index(GPCI)があります。他方でWCCFの強みは、CREATIVE Data Explorerを通じて、文化政策、参加、文化インフラ、都市課題との接続を、より政策実務に近い粒度で見られる点にあります。つまり、都市の「総合力」を測る指標と、文化政策の「設計や改善」に使う指標とは、役割が異なるのです。


都市としての東京の強みと、2026年開催への期待

東京は依然として、世界有数の文化的エネルギーを持つ都市です。WCCFの事例集でも、空き住戸をアーティスト向けの低廉な制作拠点へと転用するSTART Boxや、アート・テクノロジー・市民参加を接続するCivic Creative Base Tokyo(CCBT)が紹介されています。こうした取り組みは、東京の文化政策が単なる発信型ではなく、都市課題に対する具体的な介入として組み立てられていることを示しています。


「ネットワーク」と「サポート」をどう強めるか

WCCFには毎回、都市間で政策担当者や実務家が学び合うLeadership Exchange Programmeがあります。単なる情報交換ではなく、他都市の実践を見て、自分たちの都市で応用するための仕組みです。

今度の東京開催を機に、特に重要になるのは二つの論点でしょう。ひとつは、行政だけでなく、民間、アーティスト、コミュニティが横断的につながるネットワークをどうつくるか。もうひとつは、創造的ワークスペースの保護や、夜間経済における制度整備を通じて、文化の担い手をどう持続的に支えるかです。東京サミットは、その両方を具体的に考える場になるはずです。

文化は、都市にとっての装飾ではありません。私たちがどのような都市に住みたいのか、どのような社会をつくりたいのかを形づくる基盤です。2026年の東京サミットが、東京にとっても、日本の文化政策にとっても、そのことを改めて可視化する機会になることを期待したいと思います。

© Arts&Considerations行政書士事務所 

    bottom of page