「同意を取る」で終わらせないーー障害者芸術活動における意思確認・同意形成・意思決定支援
- Arts&Considerations Tomoki Sakuta

- 15 時間前
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2026年7月24日、東海・北陸ブロック障害者芸術文化活動広域支援センターの権利保護ミニ講座で、「権利擁護の基本構造――本人の意思確認・同意形成・意思決定支援」をテーマにお話ししました。
これまでの講座では、作品の作者は誰か、著作権や原作品の所有権は誰に帰属するのかといった問題を扱ってきました。
滋賀県が策定した「障害福祉サービス事業所の造形活動における作品の著作権等の保護のための指針」は、福祉事業所の利用者を作品の作者として捉え、本人の著作権や所有権が保護される環境を整えることを出発点としています。(滋賀県公式サイト)
今回の講義では、その先の問題を取り上げました。
作品の権利が本人にあるとして、展示、貸出し、売却、商品化、作品画像の掲載などについて、本人が自分で決められるようにするには、どのような情報、環境、支援が必要なのでしょうか。
本稿では、当日の講義内容に、参加者との質疑応答で出た実務上の問題を加えて再構成します。個別の相談案件に関する部分は除き、事例は特定の個人や団体が分からない形にしています。
1.「この人は決められるか」という問いを分解する
意思決定に困難がある人について、「自分で決められる人」「自分では決められない人」と一括して評価してしまうことがあります。
しかし、実際の意思決定はそれほど単純ではありません。
同じ人でも、
展示への参加は理解して決められる
作品を売ることについては詳しい説明が必要になる
ウェブ上で作品画像が長期間公開されることは想像しにくい
本名の掲載には同意するが、障害や病歴の掲載は望まない
ということがあります。
体調、場所、説明する人、説明方法、考えるための時間によっても、本人の理解や意思表示のしやすさは変わります。
そこで、本人全体の「能力」を先に評価する前に、次のように問いを分ける必要があります。
何について決めるのか。いつ決めるのか。どのような情報が必要か。どのような方法であれば情報が伝わるか。どのような環境であれば意思を示しやすいか。
意思決定の困難さを本人の障害や特性だけに帰属させず、情報、環境、周囲との関係、支援方法との相互作用として考える視点です。
2.意思決定支援の「解像度」は、なぜ上がってきたのか
本人が決めるための支援という考え方は、近年突然現れたものではありません。
障害者の権利保障に加え、医療、心理学、コミュニケーション支援、財産管理、研究倫理などの分野で、意思決定を具体的に捉えるための知見が蓄積してきました。
障害者権利条約と支援を受けた意思決定
障害者権利条約第12条は、障害者が他の者との平等を基礎として法的能力を享有することと、その行使に必要な支援へアクセスできるようにすることを締約国に求めています。
障害者権利委員会の一般的意見第1号は、本人に代わって判断する仕組みから、本人の意思と選好を支える仕組みへの転換を強く打ち出しました。(国連人権高等弁務官事務所)
この議論を背景に、意思決定支援では、支援者が本人のために適切な結論を選ぶことよりも、本人が自ら決定できる条件をどのように整えるかが重視されるようになっています。
性的同意――本人の代わりに決めにくい領域
性的同意の問題では、障害や認知機能の低下があることを理由に、周囲が本人の意思を置き換えることには大きな問題があります。
英国最高裁判所の A Local Authority v JB 事件では、性的関係に関する意思決定について、相手方が同意していることを本人が理解する必要があるかが争われました。
最高裁は、この判断に必要な情報として、相手方が行為の前と行為の間を通じて同意している必要があることを含めました。最高裁は判決に加え、本人にも理解しやすいEasy Read版の概要を公開しています。(最高裁判所)
性的同意と作品の売却や公開では、法律上の構造も効果も異なります。ここで参考になるのは、
この決定をするために、本人が理解する必要のある情報は何か
を具体化する方法です。
作品を売る場合には、原作品の所有権が移ること、代金を受け取ること、原則として作品が戻らないことなどが判断材料になります。
障害や病歴を公開する場合には、どの情報が、誰に、どの媒体で伝わり、どの程度拡散し、後からどこまで変更できるのかを考える必要があります。
財産管理――決定ごと、時点ごとに考える
イングランド・ウェールズのMental Capacity Act 2005では、意思決定能力は、特定の事項について、問題となる時点に本人が自ら決定できるかという形で捉えられています。(立法.gov.uk)
同法はさらに、周囲から見て賢明でない選択をしたことだけを理由に、本人が意思決定できないと扱ってはならないと定めています。(立法.gov.uk)
これは英国法上の原則であり、日本の展示や契約に直接適用される規定ではありません。
それでも、支援者の評価と本人の意思を切り分ける視点として参考になります。
精神医療や福祉――「待つこと」も支援になる
精神状態や認知状態、疲労、緊張などによって、本人が情報を理解し、意思を示しやすい時点が変わることがあります。
NICEの「Decision-making and mental capacity」は、意思決定能力が変動する場合も含め、本人が意思決定できるように支援する方法と、個別の状況に応じた評価・記録を扱っています。(ナイス)
現場では、
時間を置く
体調のよい時点を選ぶ
場所を変える
説明する人を変える
一度の回答で確定せず再確認する
といった対応が考えられます。
「今は決めにくい」という状態から、本人には意思決定ができないと直ちに結論づけないことが重要です。
研究倫理――同意を継続的な過程として捉える
医療・研究倫理では、一度取得した包括的な同意だけで、将来のすべての利用を正当化できるのかという問題が長く検討されてきました。
dynamic consentは、参加者が同意する項目を選び、研究の途中でも選択を変更できるようにする考え方です。continuous consentは、新しい情報や状況の変化に応じて、参加継続の意思を一定の時点で再確認します。(BDI Oxford)
また、認知症研究などでは、正式な法的同意とは別に、本人の肯定的な参加意思をassentとして確認し、言葉、表情、動作、行動に現れる拒否をdissentとして尊重する考え方があります。(PubMed)
これらも、障害者芸術活動にそのまま適用される法的制度ではありません。
一方で、
同意を利用項目ごとに分ける
新しい利用が生じたら改めて説明する
長期利用では意思を再確認する
拒否的な反応があれば一度立ち止まる
という実務には有用な示唆があります。
3.厚生労働省ガイドライン第2版案
厚生労働省は2017年に「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン」を策定しました。
2026年7月10日に開催された社会保障審議会障害者部会では、その改訂版となる「第2版案」が参考資料として示されました。現時点では正式発出前の案です。(厚生労働省)
第2版案は、改訂の背景として、認知症、医療、後見事務等の他分野で意思決定支援ガイドラインが整備されたことや、障害者権利条約と障害者権利委員会の総括所見を挙げています。
同案では、意思決定支援の主体について、支援者ではなく本人であると整理しています。
本人が自らの意思、選好、価値観に基づいて意思決定できる状態と、その過程を支える取組が、意思決定支援として位置づけられています。
さらに、「本人が意思決定できる状態」には、
決定を強いられない
決定しない
保留する
変更する
誰かと一緒に考える
といった選択肢や可能性が閉じられていない状態が含まれるとされています。
このガイドラインは、主として障害福祉サービスの提供場面を対象としています。展覧会、作品販売、商品化などの法律関係を直接定めるものではありません。
それでも、障害者芸術活動における本人の意思確認を考える上で、有力な実務上の参照枠になります。
4.意思形成、意思表明、意思実現
意思決定支援は、三つの段階に分けると整理しやすくなります。
意思形成支援――考えるための材料を届ける
本人が判断するためには、何が起きるのかを理解できる情報が必要です。
説明には、
平易な言葉
写真や絵
動画
実物
会場見学
過去の展示例
完成予想図
試作品
などを利用できます。
情報を一度に伝えず、小さく分けることや、時間を置いて再度説明することも支援になります。
作品の売却を例にすれば、次の内容を分けて伝えます。
現在分かっている事実
原作品の所有権が購入者へ移る
作品は原則として本人の手元には戻らない
対価として金銭を受け取る
現時点では分からないこと
将来の市場価格
今後どのような評価を受けるか
購入者が将来どこで作品を展示するか
考えられる利益
収入を得られる
新しい場所で作品を見てもらえる
作家としての活動が広がる可能性がある
考えられるリスク
本人が見たいときに原作品を見られなくなる
後から売却を取り消すことが難しい
想定していなかった場所で展示される可能性がある
他の選択肢
売らずに貸し出す
一定期間だけ展示する
原作品を保有したまま複製物を利用する
支援者が意見を述べることもあります。その場合は、事実、将来予測、リスク、支援者の助言を区別して伝える必要があります。
リスクを説明しなければ、本人は十分な材料を持たずに判断することになります。一方、支援者の評価が強く出ると、本人が期待される回答を選ぶ可能性があります。
最後に決める人が誰なのかを、説明する側も確認しておく必要があります。
意思表明支援――YESだけを求めない
意思は、署名や言葉だけで表されるとは限りません。
指差し、絵や写真の選択、視線、表情、動作、日常的な行動など、その人に合った方法で示される場合があります。
法律や契約によって特別な方式が求められる場合を除けば、意思表示の方法が常に署名に限定されるわけではありません。ただし、後に確認できるよう、説明した内容と意思表示の経過を記録することは重要です。
特に注意したいのは、本人が拒否していないことを、そのまま同意と扱わないことです。
本人が表明できる選択肢には、
はい
いいえ
分からない
今は決めない
後で考える
もう一度説明してほしい
も含まれます。
厚労省第2版案も、「いいえ」と言いやすくすること、選択肢を示して丁寧に説明すること、本人のペースに合わせることを支援者に求めています。
意思実現支援――決めた内容を運用に反映する
本人の意思を確認しても、展示や契約の実務に反映されなければ、意思決定支援は完了しません。
たとえば本人の希望が、
展示には参加する
作品画像の広報利用は認める
本名は掲載しない
顔写真は掲載しない
障害や病歴は紹介しない
貸出しには応じる
売却には応じない
という内容であれば、展示、キャプション、広報、契約をその内容に合わせます。
「展示に同意した」という一つの確認によって、氏名、顔写真、病歴、SNS掲載、商品化まで認めたことにはなりません。
何について決めるのかを分けること自体が、意思決定支援の一部です。
5.意思を明確に確認できない場合の「最善の解釈」
本人に分かりやすく情報を伝え、意思を示す方法と環境を整えても、特定の場面では意思や選好を明確に確認できないことがあります。
厚労省第2版案は、その場合に、
本人の表情や感情
動作や行動
これまでの生活
繰り返し示されてきた選び方
本人の価値観
人間関係や生活史
などを踏まえ、「本人の意思と選好に基づく最善の解釈」を行うとしています。
重要なのは順序です。
最初から家族や支援者が「本人ならこう考えるだろう」と結論を出すのではなく、まず、本人が自ら決めるために可能な支援を尽くします。
それでも確認が困難な場合に、複数の情報を集め、推測の根拠を明らかにしながら検討します。
「最善の解釈」は、本人の意思を確定したことにする手続ではありません。本人の生活や経験から示されてきた意思と選好を踏まえ、本人であればどのような判断をする可能性が高いかを慎重に検討する方法です。
6.作品公開と個人情報公開を分ける
障害者芸術活動では、作品の紹介とともに、作者の障害、病歴、家族関係、制作を始めた経緯などが語られることがあります。
こうした情報が、作品を理解する上で重要だと考えられる場合もあります。
しかし、作品を公開することへの同意と、本人の生活や障害に関する情報を公開することへの同意は、分けて確認する必要があります。
本人を識別できる形での障害の事実や病歴は、個人情報保護法上の要配慮個人情報に該当します。要配慮個人情報の取得や個人データの第三者提供には、法定の例外を除き、原則として本人の同意が必要です。(警察庁)
実務では、次の項目を分けて確認します。
本名または作家名
顔写真
所属する福祉事業所等
障害の有無、種別、程度
病歴や診断名
家族や生活に関する情報
制作背景
会場での掲示
ウェブサイトへの掲載
SNSへの掲載
報道機関への提供
本人には、実際に掲載するプロフィール原稿やキャプションを見せることが望まれます。
ウェブ掲載であれば、どのような画面に掲載され、誰が見る可能性があるのかも、できるだけ具体的に示します。
7.貸出し、売却、著作権利用を区別する
作品を一時的に貸すこと、原作品を売ること、作品画像を商品や広告に使うことでは、それぞれ法的効果が異なります。
貸出し
貸出しでは、原作品の所有権は原則として本人側に残ります。
説明する事項としては、
誰に貸すのか
どこで使われるのか
何の目的で使われるのか
期間はいつまでか
どのように保管・展示されるのか
いつ、どのように返却されるのか
などがあります。
売却
売却すれば、原作品の所有権は購入者に移ります。
本人が受け取る金額、支払方法、作品が原則として戻らないこと、購入者が作品を再度売却する可能性なども判断材料になります。
著作権利用
原作品を売っても、著作権まで当然に購入者へ移るわけではありません。
原作品を本人が保有したまま、作品画像を商品、印刷物、ウェブサイト、広告などに利用する契約を結ぶこともできます。
原作品の所有と著作権利用を、図、写真、実物、試作品などで説明し、どの範囲の利用を認めるのかを具体的に確認します。
8.本人の選択が周囲の期待と違うとき
本人が、支援者や家族の考える「良い選択」と異なる意思を示すことがあります。
市場価格より安い価格で特定の人に売りたい、有名な展覧会に参加したくない、評価が上がる可能性があっても作品を売りたくない、といった選択です。
厚労省第2版案では、職員等の個人的価値観や一般的な常識に照らして不合理に見える決定であっても、他者の権利を侵害しない限り、本人の選択を尊重する姿勢が求められています。
本人に不利益が及ぶ可能性がある場合にも、失敗や不利益をゼロにすることだけを目的として選択を制限せず、リスクを理解した上で選択し、その経験から学ぶ過程を尊重することが示されています。
もちろん、重大な損失や安全上の問題が予測される場合には、丁寧な説明と対策が必要です。
ここで区別したいのは、
本人が情報を十分に理解できていない状態
情報を理解した上で、周囲とは異なる価値判断をしている状態
です。
支援者が望ましいと考える結論と、本人が自分で決定できることは一致するとは限りません。
9.同意を継続的に確認する
展示や商品化の同意は、取得した時点で完結するとは限りません。
特に、
長期間のウェブ掲載
SNSや動画での継続的な公開
作品データベースへの収録
長期貸出し
継続的な商品販売
作者の生活史や病歴を含むキャプション
では、時間の経過によって本人の考えや状況が変わることがあります。
当日の質疑応答でも、家族関係の変化によって映画の上映が難しくなった例や、過去に作成したキャプションの内容が、現在の本人や家族の認識に合わなくなった例が共有されました。
過去の同意が法的に有効であることと、その情報や利用を現在も続けることが適切であるかは、分けて検討できます。
本人が後から不安や拒否を示しても、それだけで契約が直ちに解除されたり、利用許諾が当然に撤回されたりするとは限りません。
それでも、本人の反応を再確認のきっかけとして受け止めることはできます。
必要に応じて、利用者や購入者と協議し、公開範囲、期間、キャプション等を変更します。
契約や事業の設計によって、再確認を行いやすくすることも可能です。
利用期間を設定する
更新時に本人の意思を再確認する
長期貸出しを一定期間ごとの契約にする
一定期間利用されない場合の取扱いを定める
想定外の利用が生じた場合の協議条項を置く
利用目的や媒体が変わった場合には再度確認する
後から戻しにくい決定ほど、事前の意思形成支援を丁寧に行う必要があります。
同時に、可能な範囲で後から見直せる仕組みを作ることも有効です。
10.支援センターと法律専門職の役割分担
質疑応答では、障害者芸術文化活動支援センターが、著作権や契約の相談にどこまで対応すべきかという質問がありました。
支援センターや福祉事業所が担えることには、次のようなものがあります。
相手方に利用目的や完成イメージの提示を求める
本人が判断するために不足している情報を見つける
本人に合う形に情報を置き換える
本人の疑問や不安を相手方に伝える
本人の意思を確認し、記録する
本人の希望を展示や事業の運用に反映する
一方で、次のような問題では、法律専門職への相談が必要になることがあります。
誰に著作権や所有権が帰属するか
契約書の条項がどのような法的効果を持つか
著作権を譲渡した場合に何ができなくなるか
契約を解除・変更できるか
損害賠償等の責任が発生するか
当事者間の合意文書をどのように作るか
支援の現場には、本人の特性や日常のコミュニケーションを理解しているからこそ担える役割があります。
法律専門職には、法的効果とリスクを正確に整理する役割があります。
両者が役割を分け、必要な段階で連携することが重要です。
11.企業や代理店との事業では、確認の時間を先に確保する
企業との商品化や広告利用では、企画発表、製造、広報等のスケジュールが先に決まっていることがあります。
質疑応答では、依頼の内容自体は魅力的でも、本人への説明や意思確認に必要な時間が取れず、急いで同意を得てしまった経験も共有されました。
本人への確認を契約直前に行うと、断る、保留する、条件を変更するといった選択が難しくなります。
案件を受けた初期段階で、企業や代理店に対し、次の事項を伝えておく必要があります。
本人への説明と意思確認に時間が必要であること
完成イメージや利用媒体を事前に示してもらうこと
氏名、顔写真、障害情報等は個別に確認すること
本人の意思によっては条件変更や辞退があり得ること
契約締結前にも本人との確認工程を設けること
十分な意思決定支援を行えない日程であれば、実施を見送る判断も必要です。
一つの案件を成立させること以上に、本人が安心して次の活動に参加できる関係を維持することが、長期的な活動基盤になります。
12.家族の関与をどう考えるか
講義の最後には、保護者へ説明した方が早いため、本人への説明が後回しになりやすいという意見も出ました。
家族は、本人の生活歴や意思表現の方法をよく知り、本人が安心して考えるための重要な支援者になることがあります。
一方で、
家族が望む選択
事業所が望む選択
主催者が望む選択
本人が望む選択
は一致するとは限りません。
家族に説明する場合も、可能な限り本人がいる場で、本人にも理解できる方法で説明することが大切です。
家族の回答だけで意思確認を終わらせず、本人がどのように反応し、何を望んでいるのかを確認します。
家族を支援から外すことではなく、本人の意思を中心に置いた上で、家族を含む周囲の環境を整えることが必要です。
13.現場で確認したい8項目
展示、貸出し、販売、商品化、情報公開などで迷ったときには、次の点を確認します。
これは誰が決めることなのか
何について決めるのかを分けたか
本人が判断するために必要な情報は何か
その情報を本人に届く方法で伝えたか
現在分かることと、分からないことを区別したか
拒否、保留、再説明、変更の余地があるか
家族、支援者、施設、主催者の意見を、本人の意思と混同していないか
時間の経過や状況の変化に応じて再確認する必要はないか
本人の意思を大切にするためには、本人だけを見ていても十分ではありません。
説明する人、伝え方、選択肢、期限、契約条件、家族との関係、企業側のスケジュールなど、本人の周囲にある条件も調整の対象になります。
作品を社会へ送り出す活動と、本人の権利や意思を支える活動を両立させるには、企画、広報、契約、支援を初期の段階から一つの事業設計として組み立てることが必要です。
おわりに
意思決定支援という言葉から、本人への説明や同意書への署名を思い浮かべることがあります。
しかし、実際には、その前後に多くの支援があります。
本人が考えるための情報を届けること。本人が自分に合う方法で意思を示せること。拒否や保留を選べること。示された意思を展示、広報、契約へ反映すること。状況が変わったときには、もう一度確認すること。
最初に考えたいのは、「この人は決められるか」という評価ではありません。
この人は、何について、いつ、どのような支援があれば、自分で決められるのか。
この問いから始めることで、作品の権利が本人にあるという原則を、実際の活動の中で生かすことができます。
参考資料
日本
海外・他領域
United Nations, Convention on the Rights of Persons with Disabilities, Article 12. (国連人権高等弁務官事務所)
Committee on the Rights of Persons with Disabilities, General Comment No.1. (国連人権高等弁務官事務所)
Mental Capacity Act 2005, sections 1 and 2. (立法.gov.uk)
UK Supreme Court, A Local Authority v JB [2021] UKSC 52. (最高裁判所)
NICE, Decision-making and mental capacity(NG108). (ナイス)
Oxford Big Data Institute, “Dynamic consent and continuous consent.” (BDI Oxford)
Black et al., “Seeking assent and respecting dissent in dementia research.” (PubMed)


