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【研究ノート】アーティストフィー確保へのアプローチ――21世紀における「展示権」の実質的保護に向けて
※ 本稿は弊所代表の作田知樹がゲストとして参加した「 art for all 社会連携プロジェクト」( 助成: 川村文化芸術振興財団 2025年度ソーシャリー・エンゲイジド・アート支援助成 ) での研究成果を2026年3月時点でメモとしてまとめたものです。ご協力いただいた皆様に感謝申し上げます。 1 展示権という「不可視の権利」 作品販売を伴わずに、施設等の主催展覧会に出品をする場合でも、アーティストは制作、出品調整、設営立会い、広報協力、トークやワークショップ対応など、多くの労働を提供している。それにもかかわらず、公立美術館、非営利スペース、企業文化施設などで、作品輸送費や材料費は支払っても、制作・出品・参加それ自体への報酬、すなわちアーティストフィーが十分に支払われない例は少なくない。日本法は、美術の著作物や写真の著作物の原作品について展示権を認めているが、その権利は実務上、アーティストの対価請求の根拠としてほとんど可視化されていない。[1] ところで、実は日本法25条のような一般的な展示権は、ベルヌ条約や万国著作権条約が各国に当然に要求す

Arts&Considerations
3月8日読了時間: 17分


【研究ノート】現代美術と著作権2001-2025――EU追及権、Deckmyn、Richard Prince、そしてWarhol Foundation v Goldsmith以後
2001年以降の現代美術と著作権の関係を論じる際、まず想起される制度の一つが、EUにおける追及権である。追及権とは、美術作品が初回譲渡後に再販売される場面で、一定の条件のもと著作者が再販売代金に応じた報酬を受ける権利であり、EUでは Directive 2001/84/EC 、すなわち2001年9月27日付「原作品の著作者のための追及権に関する欧州議会・理事会指令」によって域内ルールが整備された。加盟国は原則として2006年1月1日までにこれを実施すべきものとされ、指令は、適用対象となる「original works of art」、最低価格閾値、逓減料率、受益者などを定めている。EU法上の追及権導入の背景には、著作者保護だけでなく、加盟国ごとの制度差による域内市場の競争条件の歪みを是正するという内部市場政策上の目的もあった[1]。 もっとも、現代美術の制作実践という観点からみると、追及権は重要ではあっても、2001年以降の著作権法上の緊張の中心にあったとは言いにくい。より切実だったのは、むしろ 既存の作品やイメージを参照し、流用し、変形し、再文

Arts&Considerations
3月7日読了時間: 22分
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