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フェアカルチャー憲章×フリーランス新法:文化芸術ビジネスの新たな常識とサステナビリティ

  • 執筆者の写真: Arts&Considerations
    Arts&Considerations
  • 2月9日
  • 読了時間: 5分

更新日:2 時間前



当事務所のブログでは、以前よりアーティストやクリエーターへの適正な対価の支払い(Fair Fee)の重要性について発信してきました(参考:過去記事)。今回はその議論のアップデートとして、近年世界的に注目されている新たな国際的な動き、「フェアカルチャー憲章(Fair Culture Charter)をご紹介します。


フェアカルチャー憲章とは?

「フェアカルチャー憲章」は、ドイツユネスコ国内委員会による調整のもと、世界中のパートナーとの参加型プロセスを経て2024年に採択された国際的な宣言です。

この憲章は、アーティストや文化の担い手が、その芸術を自由に表現し、持続可能な生計を立てられるようにすることを目標としています。具体的には、「適正な労働条件と公平・公正な報酬」、「差別の根絶」、「デジタル格差の是正」など、8つの原則を掲げています。


「フェアトレード」の成功に学ぶ

この動きを理解する上でわかりやすい例が、すでに私たちの社会に浸透している「フェアトレード」です。

コーヒーやカカオなどの農業分野では、かつて生産者が不当に低い対価で取引されることが常態化していました。しかし、フェアトレード運動によって公正な取引条件が確立され、200万人以上の生産者の生活向上と産業の安定が実現しました。

フェアカルチャー憲章は、この成功事例をモデルとしつつ、文化産業特有の事情に合わせたアプローチを目指しています。例えば、フェアトレードにおける「プレミアム(奨励金)」の仕組みのように、大企業が利益の一部を地域の文化エコシステムに再投資することで、長期的な発展を促すといった考え方も示されています。


公正さがもたらす業界の持続的発展

なぜ今、文化芸術分野でこうした「公正さ(Fairness)」が求められているのでしょうか。それは、公正さと健全さが担保されることこそが、業界全体の持続的な発展(サステナビリティ)に不可欠だからです。

クリエーターが適正な報酬と労働条件を得られなければ、質の高い作品を生み出し続けることは困難です。憲章でも、適正な労働条件と報酬は、文化的な活動を持続可能にするための基本的人権として位置づけられています,。また、デジタル環境やAIの急速な普及に伴う新たな不均衡に対しても、倫理的なビジネスモデルを構築することが、文化の多様性を守り、産業の信頼性を高めることにつながります。

つまり、「フェアカルチャー」への取り組みは、単なる弱者保護ではなく、文化産業の競争力を高め、長期的に繁栄させるための戦略的な投資といえるのです。


企業の社会的責任とガバナンス/コンプライアンスの強化へ

本憲章は、政府や公的機関だけでなく、民間企業や市民団体にも署名と参加を呼びかけています。これからの文化芸術事業においては、アーティストやクリエーターとの契約関係や組織運営において、この「フェアカルチャー」の視点を取り入れることが、社会的信頼(ソーシャル・ライセンス)を得るための重要な要素となっていくでしょう。また、美術大学やクリエイティブ関係のスクールにおいてビジネス知識を学ぶ機会が少ないとか、同業団体の存在感が薄いといわれる点を含めて、アーティストやクリエーターを取り巻く状況の改善も、いっそう必要になると考えます。


日本国内の動き:フリーランス新法の施行と取引是正

さて、こうした国際的な潮流と呼応するように、日本国内でも文化芸術分野を含む個人事業主との取引慣行の是正に向けた大きな動きが始まっています。その代表的な、2024年11月1日に施行された「フリーランス・事業者間取引適正化等法」(通称:フリーランス新法)です。

この法律は、クリエーターやアーティストを含む、個人で働く人々(特定受託事業者)と、発注事業者との間の交渉力や情報収集力の格差を埋め、適正な取引環境を整備することを目的としています。具体的には、発注事業者に対して以下の義務が課されています。

取引条件の明示:業務委託時に、直ちに報酬額や業務内容、納期などを書面または電磁的方法で明示すること。これにより、文化芸術業界で長らく課題とされてきた「口約束」によるトラブルの防止が図られます。

報酬支払期日のルール化:成果物の受領から60日以内への支払期日の設定と支払い。

禁止行為の規定:受領拒否、報酬の減額、著しく低い報酬額の設定(買いたたき)、不当なやり直しなどの禁止。

就業環境の整備:ハラスメント対策体制の整備や、育児・介護との両立への配慮。

実際に、アニメーション制作業やゲームソフトウェア業などの事業者に対して公正取引委員会による指導が入るなど、監視体制も強化されています。これらの法規制は、まさに「フェアカルチャー憲章」が目指す「適正な労働条件と公平・公正な報酬」 を、法的拘束力を持って日本社会に実装するものと言えます。


コンプライアンス(法令遵守)の観点はもちろんのこと、こうした法制度の趣旨を理解し、クリエーターと対等で健全なパートナーシップを築くことが、企業のブランド価値を高め、ひいては良質な作品を生み出す基盤となります。


Arts & Considerations 行政書士事務所のサポート

Arts & Considerations 行政書士事務所では、「あらゆる方々の文化的権利および文化的公平の原理を擁護する立場からの実務的支援」をミッションに掲げています。

当事務所では、以下のようなサポートを通じて、公正報酬/フェアカルチャーの動きに同調しようとする企業様、民間団体様、公的機関、教育機関の皆様を支援しております。


契約・合意形成の支援:アーティストやクリエーターとの、知的財産権や適正な対価を踏まえた契約書の作成・交渉。

組織運営・ガバナンス構築:公平な運営ルールの策定、定款や規約の整備、ハラスメント対策や人権に配慮した組織作り。

事業計画・アドバイザリー:国際的な基準(ILO基準やユネスコ勧告等)を踏まえた、持続可能な文化事業の設計支援。

研修・セミナー・ワークショップの企画と実施:発注側/受注側/学生向け/団体職員向け等、対象別の研修について企画・実施・講師ご紹介等でお手伝いいたします。


文化芸術に関わる事業の公正化・健全化をご検討の際は、ぜひご相談ください。

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