top of page

【研究ノート】アーティストフィー確保へのアプローチ――21世紀における「展示権」の実質的保護に向けて

  • 執筆者の写真: Arts&Considerations
    Arts&Considerations
  • 3月8日
  • 読了時間: 17分
 
 

※ 本稿は弊所代表の作田知樹がゲストとして参加した「art for all社会連携プロジェクト」(助成:川村文化芸術振興財団 2025年度ソーシャリー・エンゲイジド・アート支援助成)での研究成果を2026年3月時点でメモとしてまとめたものです。ご協力いただいた皆様に感謝申し上げます。


1 展示権という「不可視の権利」

作品販売を伴わずに、施設等の主催展覧会に出品をする場合でも、アーティストは制作、出品調整、設営立会い、広報協力、トークやワークショップ対応など、多くの労働を提供している。それにもかかわらず、公立美術館、非営利スペース、企業文化施設などで、作品輸送費や材料費は支払っても、制作・出品・参加それ自体への報酬、すなわちアーティストフィーが十分に支払われない例は少なくない。日本法は、美術の著作物や写真の著作物の原作品について展示権を認めているが、その権利は実務上、アーティストの対価請求の根拠としてほとんど可視化されていない。[1]

ところで、実は日本法25条のような一般的な展示権は、ベルヌ条約や万国著作権条約が各国に当然に要求する最低保護ではない。ベルヌ条約17条は circulation, presentation, exhibition について各国政府の規制可能性に触れるが、日本法のような一般的・独立的展示権を各国に義務づけてはいない。WIPO の博物館研究も、多くの国で展示権が限定的であることを示している。比較法的に見れば、日本の展示権はむしろ特徴的であり、だからこそ、それがアーティストフィー確保にほとんど接続されていない現状はかなりアイロニカルである。[2]


2 21世紀の各国動向――展示権強化よりも「権利の外側の制度の接続」

2001年以降の各国動向を見ると、展示権そのものを直接導入・強化してアーティストフィーを確保する立法は、少なくとも主流ではなかった。実際に創作者報酬の公正化に向けた前進を生んだのは、契約公正、助成条件、団体交渉、認証制度、報酬ガイドラインといった、展示権の外側の制度である。代表例が2019年の DSM 指令であり、EU は18条で「適切かつ均衡のとれた報酬」の原則を、20条で契約調整メカニズムを定め、後から見て著しく低い報酬の是正を加盟国に求めた。展示フィーに特化した制度ではないが、「最初に安く合意したから終わり」ではなく、事後的に不均衡を是正しうるという発想を著作権法の中に埋め込んだ点は大きい。[3]

一方、米国では、17 U.S.C. §109(c) によって、適法に作成されたコピーの所有者は、そのコピーが所在する場所でそれを公に展示できる。したがって、物理的展示の局面では、著作権者の許諾対価よりも所有者の展示自由の側が強い。ここから分かるのは、展示権/display right の有無以上に、その権利がどの場面で対価請求に転化するのかこそが問題だということである。[4]


3 カナダとフィンランド――著作権ベースの展示報酬

比較法的に見て、日本に最も示唆的なのは、カナダとフィンランドである。カナダでは、CARFAC が公式に、視覚芸術家にとって exhibition right が重要な経済的権利であると説明している。さらに CARFAC-RAAV の fee schedule は、exhibition royalties と professional services fees を分けて提示し、Status of the Artist 法制の下で締結された一部合意には拘束力がある。つまりカナダでは、著作権上の展示権と、最低ロイヤルティ表・団体交渉が制度的に接続している。[5]

フィンランドでも、Kuvasto が artist-owned works の公的展示について exhibition remuneration を徴収・分配している。しかも、その制度は単なる理念ではなく、実際の徴収・分配を前提に運用されている。さらに HAM Helsinki の公募などでは、artist fee と exhibition remuneration が別建てで示されており、作品使用への対価とアーティストの参加・制作への対価とを分けて考える構造が可視化されている。ここでは、著作権ベースの展示報酬労働・参加への支払いが二本立てで整理されている。[6]

この二つの国が重要なのは、展示権を抽象的な権利にとどめず、報酬体系の一部として働かせているからである。カナダもフィンランドも、作品使用と人の労働を分けたうえで、それぞれに対価を立てている。日本で展示権を論じるなら、単に「展示権があるのだから払うべきだ」と言うだけでは不十分であり、作品展示の対価と、展示参加・制作・調整労働の対価をどう分けるかという制度設計まで踏み込む必要がある。[7]


4 英国・アイルランド・米国・豪州――ガイドライン、助成条件、認証

これに対して、英国、アイルランド、米国、オーストラリアは、より「実務標準化」に比重を置いてきた。英国では a-n が2014年に Paying Artists Campaign を開始し、2016年に Exhibition Payment Guide を公表した。そこで目指されたのは、展示権の立法的強化ではなく、publicly-funded exhibitions ではアーティストに支払うのが当然だという相場観を作ることだった。Arts Council England も、助成申請に際して、artists, creatives and specialists への支払いが recognised codes of practice に沿っていることを求めている。[8]

アイルランドでも、Visual Artists Ireland の Artists Payment Guidelines と Arts Council の Paying the Artist Policy が、公的資金を受けるプロジェクトでは artist payment が当然だという方向を打ち出している。米国では、W.A.G.E. Certification が2014年以降、非営利アート機関のアーティストフィー支払いを認証制度によって可視化してきた。いずれも中心にあるのは、著作権法上の展示権ではなく、支払いを標準化し、払っている機関を可視化することである。[9]

オーストラリアも、この系譜に位置づけられる。連邦政府の Revive は、創造的才能が fair remuneration, industry standards and safe and inclusive work cultures によって育成されるべきだと明示している。そのうえで NAVA の Code of Practice は、2025年7月時点でも毎年インデックス更新される Payment Standards を持ち、artist fees を「time, ideas, labour and skills」への支払いと定義し、production fee を別建てにしている。つまりオーストラリアは、行政が理念を示し、業界団体が実務標準を更新するという役割分担を比較的明瞭に示している。[10]


5 スウェーデンと韓国――報酬項目を分ける発想

スウェーデンの MU 協定は、展示される作品に対する展示報酬と、制作・準備・参加に対する参加報酬を区別する点で重要である。ここでは、作品そのものへの対価と、人の労働への対価が分けて考えられている。これは、日本でしばしば曖昧になる「作品使用料」「参加謝礼」「制作に伴う労務対価」を整理するうえで示唆が大きい。

韓国の「美術創作対価」基準もまた、日本にとって非常に参考になる。そこでは支払項目が「参加費」「創作事例費」「制作支援費」に分けられている。参加費は招待・参加自体への報酬、創作事例費は企画・構想・創作などへの労働報酬、制作支援費は別建ての実費である。日本ではアーティストフィーが、展示権使用料なのか、労務対価なのか、単なる謝礼なのか、材料費込みなのかが混ざりやすい。韓国のような分解は、まず「何に対して払っていないのか」を明確にする点で大きな意味を持つ。


6 日本の現在地――現実的には米英豪型、理想的には加・芬・韓型

以上を踏まえると、日本がすぐに採りうるのは、現実には米英豪型である。すなわち、ガイドライン、標準契約、相談窓口、助成条件化の整備である。文化庁はすでに、2022年に「文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドライン」を公表し、その後、実務研修会、法律相談窓口、2024年のフリーランス新法施行に合わせた改訂作業まで進めている。これは、韓国型の包括法制とは違うが、日本ではかなり重要な基盤である。[11]

ここで、ドイツ・ユネスコ国内委員会が国際的に推進しているフェアカルチャー憲章のような枠組みは、第1段階の日本にとって大きな意味を持ちうる。法改正以前に必要なのは、まず「払うことが標準である」という規範の可視化である。W.A.G.E. が certification によって「この機関は一定の基準で払っている」と外から見えるようにしたように、日本でも、憲章賛同機関、契約書利用機関、フィー基準参照機関、相談窓口設置機関を段階的に可視化することができれば、法改正以前の準認証モデルとして機能しうる。[12]

他方で、理想像として目指すべきなのは、カナダ・フィンランド・韓国型である。すなわち、作品の展示や画像利用といった権利ベースの対価と、制作・参加・準備労働への対価を分け、しかもそれを公的展示や公的助成に接続し、必要なら団体交渉や標準単価表まで備えるモデルである。日本法の展示権はそこへ向かう際の法的フックにはなりうるが、それだけに依拠すると、所有権移転後の作品展示では権利制限が前景化し、かえって「だから展示料は不要」という議論に流れやすい。展示権は出発点にはなるが、単独では足りず、使い方によっては足枷にもなりうる。[13]


7 誰が動かすのか――文化庁、団体、国公立機関の具体的連携

日本では韓国のように先に包括的な芸術家福祉法制ができるとは考えにくい。だからこそ、現実的な突破口は、文化庁の契約適正化施策に、アーティスト団体・国公立機関・助成主体が横に接続することである。文化庁基盤推進室が担うべきなのは、金額表を自ら作ることよりも、契約書面化、報酬項目の分解、支払時期の明確化、相談・紛争予防の仕組みの整備である。たとえば視覚芸術向けに、展示参加労働対価、作品展示対価、図録・ウェブ・アーカイブ画像利用対価、実費を分けて記載する標準別紙様式を、ガイドライン附属資料として設けることは十分可能だろう。[14]

一方で、具体的な金額レンジや相場の目安は、全国美術館会議、日本博物館協会、国立アートリサーチセンター、アーティスト団体、著作権等管理団体、中間支援団体などが共同で策定するのがよい。最初から全国統一の厳密な料金表にしなくても、ソロ展、二人展、グループ展、トーク、ワークショップ、新作委嘱、既存作出品といった類型ごとのレンジを出すだけでも、交渉可能性は大きく変わる。ここで重要なのは、行政が理念と最低原則を示し、団体が実務標準を作るというオーストラリア型の役割分担である。[15]

さらに、国公立機関は「先行実装の場」になるべきである。国立美術館、都道府県立館、政令市クラスの公立館、公的助成を受けるアートセンターなどが、アーティストフィー項目の必須計上、契約書使用、支払時期明記を先行実装すれば、民間全体に波及しやすい。Arts Council England が助成申請に対して fair pay を求めているのと同じ発想で、日本でも文化庁補助金、自治体助成、企業財団助成、登録博物館制度に、アーティストフィー項目の計上や理由説明義務を接続することは十分考えられる。[16]

最後に必要なのは、基盤推進室と現場団体の定期協議の場である。単発の検討会ではなく、年1回ないし年2回、文化庁、国公立館団体、アーティスト団体、助成団体、法律実務家が集まり、アンケート結果、相談窓口の相談類型、典型的な契約紛争を共有し、それをガイドライン改訂や標準様式改善に反映させる。文化庁はすでに研修会と法律相談窓口を運営しているので、その実務データを視覚芸術分野の制度改善へ還元する回路を作ることは現実的である。[17]


8 独禁法というボトルネック――法的裏付けの必要性

ただし、日本でアーティスト団体や美術館団体が全国的な報酬基準を策定しようとする場合、独占禁止法上の問題を避けて通ることはできない。公正取引委員会は、資格者団体について、価格・報酬は最も重要な競争手段であり、法定根拠のない団体が、会員の収受する報酬について標準額・目標額など共通の目安となる基準を設定することは、独禁法上問題となるとしている。[18]

この点は、建築士との比較でよく見える。建築士については、建築士法25条に基づき国土交通大臣が業務報酬基準を定めることができ、2024年にも改定が行われた。つまり合法な報酬基準の典型例は、国家による明示的授権を伴う。他にも、公証人の手数料は公証人手数料令により定められ、法務省もそれ以外の報酬を受けてはならないと説明している。診療報酬・介護報酬・労災診療費算定基準のように、公的財源支出の単価表として法制度に組み込まれている例もある。合法な報酬基準は、たいてい国家が直接定めるか、少なくとも法令による裏付けを持っているのである。[19]

では、アーティストフィーはどうするか。ここで参考になるのが、競争法上の安全港(セーフ・ハーバー)である。EUでは、2022年の欧州委員会ガイドラインが、solo self-employed の一定の集団交渉について、EU競争法を適用しないか、少なくとも執行しないことを明確にした。具体的には、単一事業者に専属的・従属的に働く者、同一事業者の労働者と同様の仕事をする者、デジタルプラットフォームを通じて働く者、さらに交渉力の弱い立場で national or EU legislation に基づき集団交渉する者などが対象として想定されている。[20]

オーストラリアでは、ACCC の Collective Bargaining Class Exemption が2021年6月3日に開始され、年商1000万豪ドル未満の小規模事業者や independent contractors は、所定の notice を提出すれば、競争法違反のリスクなく集団交渉できる。法的保護は notice 提出後に自動的に始まり、現行制度は2030年まで有効である。これは、まさに「弱い交渉力のフリーランスに、限定的な安全港を与える」モデルであり、日本でも非常に参考になる。[21]

したがって、日本で本格的なアーティストフィー基準を全国的に機能させるには、何らかの法的裏付けがやはり必要である。ただし、それは建築士のようなフルスペックの授権立法に限らない。現実的な順番としては、

(1)まず公的資金事業・公的施設に限定した支払基準を文化政策として制度化する

(2)次に、弱い交渉力のフリーランスたるアーティストの集団交渉について、競争法上の安全港または例外を設ける

(3)そのうえで、必要なら視覚芸術分野固有の報酬基準策定公表(公示)へ進む

というルートが考えられる。[22]


9 むすび

21世紀の国際動向が示しているのは、展示権そのものを直接強化した国よりも、契約公正、助成条件、団体交渉、認証制度、標準単価表、そして報酬項目の分解を通じて、アーティストフィーを実質的に確保してきた国の方が多い、ということである。カナダとフィンランドは著作権ベースの展示報酬を比較的明確に運用し、英国とアイルランド、オーストラリアは助成条件とガイドラインを接続し、スウェーデンと韓国は作品と労働を分ける仕組みを示している。日本法は、比較法的に見ても珍しく、視覚芸術の原作品展示に関する権利を明文で持っている。問題は、権利がないことではない。権利があるのに、それをアーティストの対価に結びつける制度と実務を作ってこなかったことである。[23]

だから日本で必要なのは、展示権の実質的保護である。展示権を出発点として認識しつつ、議論の中心は、契約、助成、最低保障、団体交渉、相談窓口、標準書式、そして競争法との調整へと広げていかなければならない。アーティストフィーを「当然に支払われるべき対価」へ引き上げられるかどうかが、日本の視覚芸術政策が持続可能性と真摯に向き合えるかを測る試金石となる。


[1] 日本の著作権法は、美術の著作物や写真の著作物の原作品について展示権を認めている。これ自体は、日本で展示対価を論じる際の法的出発点になりうる。

[2] ベルヌ条約や万国著作権条約は、日本法25条のような一般的・独立的展示権を各国に明文で義務づけているわけではない。WIPO の博物館研究も、各国で展示権の扱いが揺れていることを示している。

[3] 2019年の DSM 指令18条・20条は、「適切かつ均衡のとれた報酬」および契約調整を定める。展示報酬制度ではないが、創作者保護を契約法理から支える。

[4] 米国著作権法17 U.S.C. §109(c) は、適法に作成されたコピーの所有者に公の展示を認めており、物理的展示の局面では所有者の自由が強い。

[5] CARFAC は、カナダ著作権法における visual artists の重要な経済的権利として exhibition right を明示し、fee schedule に exhibition royalties と professional services fees を併記している。

[6] Kuvasto は、artist-owned works の公的展示について exhibition remuneration を徴収・分配している。HAM の公募実務も、artist fee と exhibition remuneration の分離を示している。

[7] カナダとフィンランドの重要性は、作品使用への対価と労働への対価を分けたうえで、いずれも制度として運用している点にある。

[8] a-n の Paying Artists campaign と Exhibition Payment Guide は、publicly-funded exhibitions における支払いの基準化を目指す。Arts Council England は、それを助成審査で支える。

[9] Visual Artists Ireland の Artists Payment Guidelines は、公的資金を受ける多くのプロジェクトで artist payment が必須であると明記している。米国の W.A.G.E. Certification は、認証を通じて支払いを可視化する。

[10] オーストラリアでは、Revive が fair remuneration を文化政策として掲げ、NAVA の Code が Payment Standards を毎年更新している。artist fees は time, ideas, labour and skills への対価と定義され、production fee は別建てである。

[11] 文化庁は2022年に契約適正化ガイドラインを公表し、その後、実務研修会、法律相談窓口、2024年の改訂作業まで進めている。

[12] フェアカルチャー憲章のような枠組みは、日本で第1段階の規範形成を進めるうえで、賛同機関を拡げるモデルとして機能しうる。W.A.G.E. の認証制度と同様、法改正以前に「払うのが当然」という文化的正当性を可視化する役割を持ちうる。

[13] 日本法の展示権は法的フックにはなるが、それだけに依拠すると、所有権移転後の展示では権利制限が前景化し、かえって制度設計の足枷にもなりうる。だから必要なのは、展示権を起点としつつ、契約、助成、最低保障、団体交渉へと議論を拡張することである。

[14] 文化庁基盤推進室の役割は、金額表を自ら作ることより、契約書面化、報酬項目の分解、支払時期の明確化、相談・紛争予防の仕組みを整備することにある。

[15] 日本で具体的な金額レンジや支払い基準を作るなら、全国美術館会議、日本博物館協会、国立アートリサーチセンター、アーティスト団体、著作権等管理団体、中間支援団体などが共同で策定し、行政は理念と最低原則を示すという役割分担が現実的である。オーストラリアの Revive と NAVA はその参照例になる。

[16] 国公立機関は先行実装の場になるべきである。国立・公立館や公的助成を受けるアートセンターが、アーティストフィー項目の必須計上、契約書使用、支払時期明記を先行導入すれば、民間全体にも波及しやすい。Arts Council England の助成審査はその参照例である。

[17] 文化庁基盤推進室と現場団体の定期協議の場が必要である。文化庁はすでに研修会と法律相談窓口を運営し、アンケートも実施しているので、その実務データを視覚芸術分野の制度改善へ還元する回路を常設化できる。

[18] 公正取引委員会は、法定根拠のない資格者団体等が、会員の収受する報酬について標準額・目標額など共通の目安となる基準を設定することは独禁法上問題となるとする。価格・報酬は最重要の競争手段だという整理である。

[19] 建築士の業務報酬基準は建築士法上の授権に基づき国が定めており、2024年にも改定された。公証人手数料は公証人手数料令に基づき国家が定める。診療報酬・介護報酬・労災診療費算定基準も、公的財源支出の単価表として法制度に組み込まれている。合法な報酬基準の多くは、このような法的裏付けを持つ。

[20] EUでは、2022年の欧州委員会ガイドラインが、solo self-employed の一定の集団交渉について、EU競争法の適用外または不執行となる場合を明確化した。単一事業者への専属性、同一事業者内労働者との同質性、デジタルプラットフォームを通じた就労、交渉力の弱い立場で national or EU legislation に基づいて行う集団交渉などが挙げられている。

[21] オーストラリアでは、ACCC の Collective Bargaining Class Exemption が2021年6月3日に開始され、年商1000万豪ドル未満の小規模事業者や independent contractors は、notice を提出すれば競争法違反のリスクなく集団交渉できる。法的保護は自動的に始まり、現行制度は2030年まで有効である。

[22] 日本で全国的なアーティストフィー基準を本格的に運用するには、少なくとも、公的資金事業に限定した支払基準の制度化か、弱い交渉力のフリーランスに対する集団交渉の競争法上の安全港が現実的な選択肢となる。

[23] 各国比較の要点は、展示権を直接強化するより、契約公正、助成条件、団体交渉、認証制度、標準単価表、報酬項目分解を組み合わせて実質的保護を進めている点にある。日本でも問われるのは、展示権の新設ではなく、その実質的保護である。

参考文献・ウェブサイト

  • 文化庁「文化芸術活動の基盤強化」

  • 文化庁「芸術家等実務研修会の実施」

  • 文化庁「文化芸術活動に関する法律相談窓口」

  • 文化庁「『文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドライン(検討のまとめ)』を公表します」

  • 文化庁「『文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドライン(検討のまとめ)』を改訂します」

  • 公正取引委員会「資格者団体の活動に関する独占禁止法上の考え方」

  • 国土交通省「建築士事務所の業務報酬基準を改定します」

  • 法務省「公証制度に基礎を置く電子公証制度」および公証人法手数料令関係資料

  • 厚生労働省「診療報酬・介護報酬改定」関係資料

  • European Commission / EUR-Lex, Guidelines on the application of EU competition law to collective agreements regarding the working conditions of solo self-employed persons 

  • ACCC, Collective Bargaining Class Exemption 関係資料

  • Office for the Arts, Revive: A place for every story, a story for every place 

  • NAVA Code of Practice / Payment Standards 関係資料

  • CARFAC, Copyright, Fee Schedule, Agreements 

  • Kuvasto, Exhibition Remuneration Right / About Us 

  • Visual Artists Ireland, Artists Payment Guidelines / policy materials

  • WIPO, Museum Policies and Copyright 


© Arts&Considerations行政書士事務所 

    bottom of page